ひとり一人に合わせて処方した漢方で健康に
松本有記氏
漢方専門医院 松本有記クリニック院長
漢方薬には、既製品とオリ ジナルがあります。例えば冷 え性ならこれ、血圧が高いならこれ、とおおよその症状を緩和するために薬をミックス したものが既製品のエキス漢方。日本の多くの漢方はこの既製品です。
一方、患者の症状や状態を丁寧に見て触診し、問診し、250 種類の植物のほかに鉱 物や虫なども使って組み合わせ、調合したものがオリジナルの漢方です。 兵庫県芦屋市で開業する松 本有記医師は、オリジナルの漢方を処方してくれる漢方医。
今は漢方医の傍ら、「本当 の健康を知る セミナー」と 称して健康講座を各地で開き、多くの人に健康になるためにはどうしたらいいか、 自身の体験を交えながら講演をされています。今回、松本先生の講演と、 インタビューしたものをまとめてお伝えします。
漢方専門医院 松本有記クリニック
兵庫県芦屋市大原町11 番24-203 号
JR 芦屋駅 北側 徒歩3 分 電話:0797-32-7755
http://matsumoto-yuki-clinic.jp/
●体が異常に弱かったから。行きついたところが漢方だった
私は中学生になった頃からとにかく体が不調で、特にお腹が弱かったんです。お腹というのは、エネルギー源ですから、ここが弱いと力が出ません。その頃の私の幸せは、寝ること。家でゴロゴロしてばかりいたので、親からは「怠け者、最低」とののしられていました。
とにかく元気になりたくて、20歳のときには、健康食品の店に通っていました。家が薬局だったので、母親にもいろいろ健康食品を摂らされましたが、効果はありません。こんなにゴロゴロしていたいのは、自分の怠けもののせいだと思っていました。
22歳の頃、突然強烈な肩こりを感じました。大学病院の整形の教授にも見てもらい、さまざまな検査もしましたが、特に悪いところはないと言われました。整骨院に行けばよけい悪くなり、電車で居眠りをすれば激痛が走るほどになっていました。
後でわかったことですが、これは16歳のときにプールで 3mの高さから飛び込みをして、うなじを強打した後遺症だったのです。その時にはなんの症状もなかったものが、 6年後に出たのです。交通事故などではよくこういうことがあります。
さて、しばらくして母が漢方薬を手がけ始めました。漢方では舌が1つの判断基準になりますが、私は舌の裏が汚い( 舌の裏の血管が汚いのはお血・血が汚れていると判断される)から、血をきれいにするこれを飲んだらいい、と 母がボトルに入った漢方薬を もってきました。飲んでみる と、非常に効果があり、強烈な肩こりの症状の8割は治ってしまったのです。その漢方薬にはヒル、アブ、などの血を吸う虫と植物性の漢方薬が入っていて、固まった血を溶かす酵素が含まれていました。 私のお血を溶かして流してくれたのでした。
あるとき、飛行機に乗っているときなのですが、ふっと 医学部を受験しよう、と思いました。私は薬科大学を卒業していて、今さら医学部に入学するなんて無謀な行動のようにも思えましたが、なんだか目に見えないものが私の背中を押した気がしました。まるでリヤカーを引いてあの山を越えなさい、と誰かに言われているかのような気がしたのです。結局 10 年遅れて医学部に入学しました。
当時の私はまだまだ体が弱 く、どんなに気をつけていて も風邪をひき、ひいたら治るまで1ヶ月はかかりました。 アレルギー性鼻炎もひどく、 抗アレルギー剤を使用しましたが、どれも効かず、ある薬にいたっては血尿が出てしまいました。体質改善の注射をすれば神経麻痺が出て、情けないくらいでした。
●西洋医学の薬はまったく 効かなかった
医学部に入ってみると、そこで習うのは、病名とそれに使う薬剤が中心です。医者になってから、私は具合が悪くなるたびに、いろいろな薬を試しました。でも、何一つ効 きませんでした。副作用はあるけれど、対症療法としても 使えず、自分は元気になることができないことがわかってきました。西洋医学では、なぜこのような病気になったのかという原因は教えてくれません。私は西洋医学にがっかりしました。
その頃、ひどい鼻炎に悩まされていた私は、次は漢方エキス剤を試してみました。漢方エキス剤は飲むと2~3分 で効き目が現れましたが、続けて飲むとだんだん効かなくなってきました。その後、私はたまたま台湾に行ったときに出会った漢方に自分の道を見出すことにな ります。
台湾では、老中医(中医学のベテランの医師)が漢方で 診断してくれ、私の脈と舌を見ただけで薬が処方されました。ものの2~3分だったでしょうか。短時間の見立てに も関わらず、その漢方は、ものすごく効きました。
実はこの漢方は、ひとり一人の状態に合わせて、多種類の生薬を選び組み合わせていくものでした。処方されたのは、私用の完全オリジナルだっ たのです。個人に合わせて処方するオリジナル漢方に出会い、この世界を極めようと、私は試行錯誤し、いろいろな研究を行い、従来のエキス漢方でなく、もっとよく効く漢方を求めて、この世界にのめりこんでいきました。そして手応えを感じ、 漢方医としてクリニックを開きました。保険診療でなく、自由診療を選んだのは、ひと り一人の患者さんとじっくり 向き合い、丁寧に関わりたかったからです。
その後は漢方だけでなく、 サプリメントや姿勢などにも目を向け、患者さんの状態に合わせて組み合わせ、さらに早く結果を出せるようになっ ていきました。体のゆがみが血液を滞らせ、体の不調をも たらすので、血液や気の流れを良くするため、ストレッチ (メディカル・ストレッチ)も 研究し、体全体を見て的確に治癒の方向へ持っていくことができるようになりました。
・・・続きは希輝(きらら)通信12号に掲載しています・・・・
~編集担当・しろがねの感想~
松本有記先生は、「本当に効く本物の医療」をめざし、実践と研究を重ねる本物のお医者さまの一人だと思います。
ご自身が10代の頃から体調が悪く、西洋医学を学んでも解決しなかったことから漢方を学ばれました。その漢方は、従来のものとは異なり、本場台湾の知識を取り入れた100%オーダーメードというもの。それに満足せず、さらに心身に良いサプリメントやストレッチの実践・研究も行っておられます。
先生に「妥協」という文字はなく、「自分の道だから」と「本物の医療」への道を登っておられ、その真摯な姿に非常に感銘を受けました。